アパレルに特化したECサイト構築方法とは?必須業務フローをまとめてみました

ECサイト運営と一言にいっても、業界によって業務内容や問題点などは異なります。今回は、アパレル業界におけるECサイトに関して、EC化率や種類、仕事内容、問題、必勝法などをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください!

ECとは?

EC(electoronic commerce)とは、「電子」を意味する”electronic” と「商取引」を指す”commerce”の略で、インターネット上でモノやサービスの売買を行います。
ECの強みとして、ネット環境さえあれば、「いつでも」そして「どこからでも」利用できることが挙げられます。実店舗での販売に比べ、ECサイト構築の際の初期費用やランニングコストを抑えられる、国境を越えて顧客層を広げられるなどといった強みがあり、年々市場規模は拡大しています。

ECは、大きく以下の3つに分けることができます。

ECの種類①BtoB-EC 企業の間で取引が行われる
②BtoC-EC 企業と一般消費者(個人)の間で取引が行われる
③CtoC-EC 一般消費者の間で取引が行われる

アパレル業界は、メーカーやブランドなどの企業が、一般消費者に対して衣類をはじめとした商品を販売することから、「BtoC-EC」に分類されます。

【現状】アパレルのec化率とは?

経済産業省が行った「平成30年度 電子商取引に関する市場調査」によれば、アパレルECが属するBtoC-EC市場規模は17兆9,845億円で、前年度から8.96%の増加を記録しました。

なかでも、アパレル業界が扱う「衣類・服装雑貨等」の市場規模は1兆7,728億円で、物販系の中でも最大の市場規模を誇ります。また、BtoC-EC全体の約10%を占め、業界単体でも前年度より約7.8%の伸びをみせています。

さらに、すべての商取引市場規模に対してEC市場規模が占める割合を示す「EC化率」では、アパレル業界ではおよそ13%を記録し、物販系全体のEC化率(6.22%)の2倍以上の数値を誇ります。
以上より、アパレル業界において、ECサイトの重要度が高いことがわかります。

参照
:)https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/H30_hokokusho_new.pdf

アパレル業界のEC化率が高い理由とは?

アパレル業界でECサイトが浸透した背景としては以下が挙げられます。

スマートフォン経由への施策を実行しやすい

物販系BtoC-EC市場規模(9兆2,992億円)において、スマートフォン経由での市場規模(3兆6,552億円)は、39.3%を占めています。とくに、若年層や女性が顧客の大部分を占めるアパレル業界では、スマートフォンを有するユーザーに対してスマートフォンにも対応したECサイトの構築をはじめとした様々な施策を行ったことで、EC化率の増加につながったといえるでしょう。

スマートフォン経由のユーザーに向けて実行できる施策は、ECサイトの構築に加え、InstagramをはじめとしたSNSや、実店舗との連携が可能なアプリ構築などが挙げられるでしょう。

アパレルECサイトの管理や運用を行う多くのツールやソリューションが台頭した

複数の販売チャネルのデータや在庫などの一元管理を行うシステムや、物流業務の全般もしくは部分的なアウトソーシングを行うフルフィルメントサービスなど、ECサイトを運営するうえで、業務効率を向上させるソリューションが多く誕生したことも要因の一つとして考えられます。

ECサイトは構築や運営の他にも、物流、プロモーションなど、業務内容が多岐にわたります。そのため、限られたリソースで業務をスムーズに遂行することは、容易ではありませんでした。しかしながら、物流管理システムや在庫管理システムなど、作業の自動化・情報の一元管理を実現するツールや、アウトソーシングなどが台頭してきたことで、より多くの事業者が気軽にEC事業へ進出できるようになりました。

アパレルECサイトの種類

アパレルECサイトは、以下の3種類に分けることができます。それぞれ特徴やメリット・デメリットとともにご紹介します。

①ECモール出店・出品型ECサイト

ECモール型のアパレルECサイトでは、ECショッピングモールへ出店または商品を出品することで、商品の販売を行います。
国内の代表的なECモールは、AmazonやYahoo!ショッピング、楽天市場が挙げられます。さらに、アパレル商材に特化したECモールとして、ZOZOTOWNやSHOPLIST.comなどが挙げられます。

メリット
・集客力が高い
・商品の露出機会が多い

デメリット
・競合性が高い
・ECモールへの月額使用料や、売上の際の手数料が多く発生する
・自社で管理できる顧客情報が限られている

②メーカー・ブランドによる独自運営型ECサイト

メーカーやブランドによる自社ECサイトでは、実店舗をもつ各メーカー・ブランドが独自で運営するECサイトを通して商品の販売を行います。多くの場合、実店舗との連携を目指すオムニチャネル化のための戦略として用いられています。

メリット
・実店舗との連携を図る施策を自由に行うことができる
・リピート率を向上させやすい
・お客様のファン化を図ることができる
デメリット
・自社ECサイト構築の段階で、実店舗やブランドへの高い認知度が必要となる
・(ECモールと比較して)顧客が限定的である
・ECサイト運営にあたり、自社で行わなければならない業務が増える

③個人経営による独自運営型ECサイト

個人経営による独自運営型ECサイトでは、個人で経営するブランドが独自で運営するECサイトを通して商品の販売を行います。上記の「メーカー・ブランドによる独自運営型ECサイト」との違いとして、「実店舗の有無」「ブランドなどの企業名の認知度の高さ」が挙げられます。
このタイプのECサイトでは、実店舗をもたず、且つ認知度もあまり高くないアパレルショップが、一販売チャネルとして独自でECサイトを運営する必要があります。

メリット
・独自の世界観を自由に演出できる
・全体的なランニングコストを抑えることができる
デメリット
・集客が難しい
・Webマーケティングなどの施策の効果が出るまでに時間がかかる
・ECサイト運営にあたり、自社で行わなければならない業務が増える

アパレルECサイトでの仕事内容

ECサイトにまつわる業務は多岐にわたることから、企業によってEC担当者の業務内容は異なります。今回は、アパレルECサイト運営に付随する、代表的な業務内容を「フロント業務」と「バックエンド業務」に分けてご紹介します。

フロント業務

✔︎商品企画
ECサイト(場合によっては、実店舗も含む)にて販売する商品の企画やコンセプトなどの立案を行います。市場調査や、ECサイトにおける過去のデータや傾向より、顧客のニーズ把握なども行う必要があります。

✔︎仕入れ
商品企画で成立したコンセプトや新商品の指示に基づいて、材料の調達方法や製品の仕入れを行います。在庫管理担当者など、バックエンド側との連携を図り、適切な数量で入荷を行うことが求められます。

✔︎マーケティング
ECサイトにおけるマーケティングは、「Webマーケティング」「メールマガジン配信」の2つに分けることができます。とくに、自社で独自にECサイトを運営する場合、前者のWebマーケティングは注力して行う必要があります。アパレルECのWebマーケティングにおける具体的な業務内容は以下の通りです。

・SEO対策(自社HPや商品に関連したコンテンツの作成)
・広告運用(リスティング広告、アフィリエイト広告、SNS広告など)
・SNSアカウント運用

さらに、競合性の高いECサイトにて、他社との差別化を図るうえで、定期的なメールマガジンの配信は有効な手段となり得ます。とりわけ、購入頻度や会員登録している期間などに基づいて、顧客ランクを設定し、それに合わせた情報提供やクポーンの配信などを行うことで、顧客のリピート率を高めることにつながります。

✔︎ECサイト制作・改良
自社独自のECサイトを構築し、運営する場合、ブランドのコンセプトに合わせてECサイトを制作することも、フロント業務に含まれます。PCだけでなく、スマートフォンに対応させたり、スマートフォンユーザーに向けたアプリ開発など、業務は様々です。

バックエンド業務

✔︎在庫管理・検品
倉庫内の在庫管理や、入出荷時の検品を行います。各在庫の品質管理だけでなく、在庫回転率などを管理することで、保持すべき適切な在庫数などを算出します。また、同一商品でも、サイズやカラーなど、アパレルECではとくにバリエーションが多いため、「なにが・どこに・どのくらいあるのか」を常に明確にすることで、受注後の業務効率を高めることが求められます。

さらに、複数のECモールへ出品していたり、複数のチャネルで販売していたりする場合は、各店舗・チャネルごとに在庫を保管するのか、一括で管理するのか、など細かい部分まで綿密にルールを設定する必要があります。

✔︎ささげ業務
ささげ業務とは、「撮影」「採寸」「原稿作成」で発生する業務の総称です。ECサイトにて掲載する商品の撮影や、サイズの採寸に加え、細かい商品情報を追記し、商品ページの原稿を作成します。

✔︎受注
受注業務では、各チャネルよりお客様からの注文受付在庫の有無の確認、在庫引当、商品や顧客のデータ管理などを行います。在庫引当は、可能な限りスピーディーに行うことで、タイムタグを短縮し、欠品状態での受注を防ぐことが必要です。複数のチャネルで販売する際には、在庫管理と連携して、どのチャネルの在庫を引き当てるのか、明確にしておく必要があります。

✔︎流通加工
アパレル業界における流通加工では、梱包やタグ付け、検品済み確認シールの貼り付け、場合によってはラッピング作業などが含まれます。EC事業の規模にもよりますが、手作業で行う際には、とくにスピーディーに、そして正確に行う必要があります。

✔︎出荷指示の提示
受注後の商品や顧客データに基づいて、出荷指示を提示し、発送手続きを完了させます。受け取った情報を正確に管理し、ミスなく業務を遂行したり、各担当者へ漏れなく伝達したりすることが必要となります。

✔︎顧客対応
商品発送後のアフターサービスを行います。発送ミスへのや、お客様からのクレーム対応など、複数の業務が発生しますが、アパレルECで最も多いのは「返品」に関する問い合わせや作業です。返品に関する自社のルールを明確に設定し、返品作業が生じた際の業務を標準化することが求められます。

アパレルECで発生する問題とは?

アパレルECで多く見受けられる課題をご紹介します。

受注・在庫管理業務が複雑になる

同一商品のバリエーションの多さが特徴のアパレルECでは、在庫や受注管理業務がより複雑になります。さらに、複数のECサイトや販売チャネルを運用する場合は、それぞれの在庫や情報を管理しなければなりません。作業量や管理する情報量が増え、業務内容が複雑になることから、各業務が煩雑化してしまったり、配送ミスの発生や遅延が起こってしまったりなど、ECサイトの価値が下がる要因となってしまうこともあります。

返品が多い

オンライン上で伝えらえる商品情報が限られていることから、実物との相違やサイズの選定ミスなどの理由から、アパレルECでは返品が頻繁に起こります。予防策として、できるだけ実物の商品に忠実な情報を掲載することが挙げられます。

また、返品が発生した際の作業マニュアルを作成し、社内で浸透させる必要もあります。繰り返しになりますが、アパレルECでは、返品は頻繁に起こるため、顧客が気軽そして簡単に返品できるサービスを提供することで、ECサイトで提供できるサービスの質を高めることにつながります。

アパレルECの勝ち方

競合性の高いアパレルECでの必勝法は「業務の標準化」「作業効率の徹底」が挙げられます。アパレル業界に限らず、ECサイトには商品の注文から配送までの速さと正確さが求められます。そのため、上記で掲げた2点を徹底することは、アパレルECでの成功を大きく左右します。これらを実現するための手段として、以下の3点が挙げられます。

①業務フローの明確化

とくにバックエンド業務では、返品に限らず、すべての段階において業務フローを明確化することで、作業にかかる時間を短縮し、最短での発送を図ることができます。ミスの発生しやすい物流業務であるからこそ、作業の標準化を行うことが必須となります。

②システムの導入

物流管理システムや、在庫管理・受注管理システムなどを導入することで、手動で行なっていた業務を自動化したり、膨大な情報を一元管理することができます。作業時間を大幅に短縮することで、業務効率を向上させるだけでなく、作業の正確さを追求することが可能になります。

③フルフィルメントサービスの利用

とくに複雑になるECでの物流業務を外部のプロに委託することで、社内でのコア業務に専念することができます。部分的なアウトソーシングも可能なため、最終的に物流コストの削減にもつながります。

しかしながら、アウトソーシングする際には、自社に物流に関するノウハウが残りにくかったり、顧客との関係性が薄れてしまったりなどの懸念点も生じます。そのため、委託先のサービスとの強い連携が必要になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。作業量の多さや複雑さなど、懸念点も目立ってしまうアパレルECですが、今後さらに重要度は高まっていきます。自社で抱える課題を明確にし、どのような施策が必要なのか、まずは洗い出してみることをおすすめします。ぜひ参考にしてみてください!

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