成長が著しいEC市場において、食品業界におけるECの浸透率には未だ多くの課題が存在します。
今回は、食品ECサイトに関して、ec化率やその推移、課題、売上高ランキング、大手ECモールによる取り組み、食品ECにおける必勝法などをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください!
目次
ECとは?
“electronic commerce”の略であるECとは、日本語で「電子商取引」を意味します。インターネット上でモノやサービスの売買や決済、契約の締結などを行います。
インターネット上で、商品の選定、注文、決済が完了するWebサイトをECサイトと呼び、「インターネットショッピング」や「オンラインショッピング」など複数の名称でも知られています。
ECサイトには、自社で独自に構築し、運営する自社型のECサイトや、Amazonに代表されるマーケットプレイス型(出品型)のECモール、Yahoo!ショッピングや楽天市場など、出店型のECモールがあります。
食品ECは、一般的に、企業と一般消費者間で取引が行われる「BtoC-EC」に分類されますが、中には企業間で取引を行う「BtoB-EC」のビジネスモデルをもつ食品特化型のECサイトも見受けられます。
【現状】食品業界のec化率とその推移
経済産業省の「平成30年度 電子商取引に関する市場調査」によれば、食品が属する物販系分野におけるBtoC-ECの市場規模は、前年度比8.12%増の、9兆2,992億円を記録しています。
食品だけに特化すると、前年度比2.64%増の、1兆6,919億円を記録し、物販分野BtoC-EC全体の市場規模に対して、約18%を占めています。
つづいて、すべての商取引市場規模に対し、ECの市場規模が占める割合を占める割合を表す「EC率」についてご紹介します。
食品業界におけるec化率は、2.64%を記録し、物販分野BtoC-ECにおけるEC化率の平均値6.22%を大きく下回り、物販分野の中でも最低値となっています。食品業界におけるec化率の推移は以下の通りです。
数値そのものは低いものの、EC化率は徐々に向上しています。
しかしながら、物販分野BtoC-ECにおいて、最も高いEC化率をもつ「事務用品、文房具」では、40.79%を記録しており、食品業界のEC事業にはいまだ多くの課題が潜んでいるといえるでしょう。
参照:) https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/H30_hokokusho_new.pdf
食品ECサイトにおける課題とは?
食品ECサイトでは、ec化率の低さが示しているように、業界内でのEC事業が浸透しない主な要因は以下の通りです。
①そもそもECサイトとの相性がよくない
魚や肉、野菜など、「生鮮食品」を扱う食品業界では、百貨店やスーパー、コンビニなど、実店舗での販売が主軸となっています。
ECサイトとの相性がいい商材としては、「販売チャネルを問わず、クオリティが同じ」 ものであり、家電製品や衣料品などが挙げられます。実際に、BtoC-ECの売上高ランキングをみても、総合系ECサイトをのぞいて、家電製品や衣料品メーカーが目立ちます。
鮮度が重要視される商材を取り扱う食品ECでは、消費者が自身で手にとって確認することのできる実店舗での販売と、同様のクオリティでサービスを提供することは非常に困難であるといえるでしょう。
②客単価が安く、利益が出にくい
ECサイトのバックエンド業務では、在庫管理や受注管理、ピッキング指示など、多くの物流業務が発生することから、人件費や物流システムのランニングコストなどがかかります。また、物流業界におけるドライバー不足はとくに深刻で、大手配送企業は配送コストの値上げもおこないました。
これに対し、食品のECでは、客単価が低いことから、運営コストに見合った利益が得られないという収益性の低さも、大きな課題となっています。
③実店舗の利便性を越えられない
ECサイトの強みは、「どこでも・いつでも・だれでも購入できる点」が挙げられます。しかしながら、食品を扱う実店舗、そのなかでもスーパーやコンビニは、店舗数の多さや立地の良さなど、インターネット上で完結はしないものの、クオリティの高いものを気軽にそして自身で選んで手に入れることができます。そのため、多くの消費者が食品を購入する手段として「実店舗」を真っ先にあげるという現状があります。
食品ECサイトの売上高ランキング
株式会社インプレスが提供する通販新聞が実施した食品通販売上高調査(2018年度)におけるTOP3企業は以下の通りです。
参照:)https://netshop.impress.co.jp/node/6609
60社を対象にランキング調査を行ったのに対し、トップ10にランクインした企業のうち、インターネットを用いた食品ECは、上記3社のみのランクインとなりました。
第1位のオイシックス・ラ・大地では、他2社と比較して、有機野菜や無農薬野菜に強みを有しています。配達日時を自由に指定できるだけでなく、購入した商品に関する詳しい説明などが添付されているというサービスも人気の要因となっています。
さらに、商品の単品購入だけでなく、セット商品の販売やサブスクリプションサービスの提供なども実施しているため、顧客のリピート率の高さにも強みをもちます。
大手ECモール3社の食品ECへの取り組み
つづいて、国内大手ECモールである、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングそれぞれの食品ECへの取り組みをご紹介します。
Amazon.co.jp
大手ECモール、マーケットプレイス型のAmazonでは、「Amazon fresh」という食品に特化したECサービスを提供しています。Amazonの有料会員である、Amazonプライム会員向けに提供されているサービスで、生鮮食品から冷凍食品まで、一般のスーパーで販売されているような食材を購入することができます。価格帯の低さや鮮度の良さなど、商品のクオリティが高いことが特徴です。しかしながら、関東の一部地域のみのサービスであるため、東京・神奈川・千葉の特定の地域以外では利用することができません。
楽天市場
楽天市場では、サイト内の食品カテゴリーにて様々な食品を取り扱っています。また、楽天と大手スーパーマーケット西友が共同運営している「楽天西友ネットスーパー」では、生鮮食品や冷凍食品、日用品など様々な食品を購入することができます。送料無料キャンペーンの他にも、配送可能エリアは、全国の17都道府県となっているため、より幅広い範囲で利用することができます。
Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングでは、サイト内に食品カテゴリーを設け、生鮮食品から冷凍食品まで、幅広い種類の食品を取り扱っています。さらに、Yahoo! JAPANが子会社化したアスクル株式会社が運営するLOHACOにて、食品をはじめとした日用品を購入することができます。配送完了に要する時間に多少の差はあるものの、日本全国への配送に対応しています。
食品ECを成功させるための必勝法とは?
懸念点が目立つ食品ECサイトを成功させるための必勝法として、以下の2つをご紹介します。
①顧客のリピート率を高める
食品ECサイトを運営するうえで、注力すべき点は「ユーザーのリピート率向上」です。単品商品における顧客のファン化を図るだけでなく、定期購入であるサブスクリプションサービスを導入することで、安定した売上獲得につながります。ユーザーのリピート率を高めるうえで、必要な施策は以下の通りです。
・送料無料や値下げクーポンなどのキャンペーンの実施
・会員ランクごとの特典を設定
リピート率を高めるうえで、顧客との接点をもつことは欠かせません。したがって、定期的にメールマガジンを配信したり、キャンペーンを実施したりすることで、既存のユーザーを飽きさせないことが重要になります。
3つ目の「会員ランクごとの特典を設定」に関しては、会員と非会員や、会員内での購入頻度による会員ランクなどを設定し、それぞれに特典を設けることで、顧客のロイヤリティを高めることにつながります。
たとえば、Amazon freshでは、Amazon Prime会員以外にも、Amazon fresh専用の会員になることで、送料無料でサービスを利用することができます。
②物流システムやアウトソーシングサービスを駆使する
多くのユーザーが、食品ECサイトに対して、「鮮度が落ちてしまうのでは…」など、商品のクオリティに懸念を抱えています。そのため、食品の保管に適した倉庫や物流システムなどを利用することでも、商品そしてサービスの質を高めることにつながります。
とくに鮮度が重要な商品を扱っている場合は、食品に強みをもつ物流会社が提供するアウトソーシングサービスを利用することもおすすめです。自社の食品EC事業における課題を洗い出し、適切なソリューションを選定しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。食品業界のEC事業は、市場規模は大きいものの、業界内のEC化率の低さが目立ちます。懸念点や課題が多いものの、将来的に成長が見込める市場であるといえるでしょう。まずは、自社の食品ECにおける課題やターゲット層を明確にすることが必要となります。ぜひ参考にしてみてください!
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