製造業や流通業では日々の業務をSCM(サプライチェーンマネジメント)にのっとって行っていますが、このSCMに必要不可欠な考え方が「リードタイム」です。リードタイムは納品スケジュールなどを立てる際に重要になってきますが、いまいちよくわからないという方もいるのではないでしょうか。今回は、そんなリードタイムについて、「納期」との違いや関連語彙の説明、リードタイムの種類や特徴も交えながら、短縮方法や短縮した際のメリットと注意点について解説します。
目次
リードタイムとは?関連語彙も解説!
リードタイムとは、製造や流通、開発の現場において、発注から納品までにかかるすべての工程に必要な時間のことです。「すべての工程に必要な時間」ですから、ここには、実際の作業時間のみならず、作業開始までの待ち時間や点検・検査の時間なども含まれます。
主に、オペレーション品質のスピード面を測る際に、利用される指標ですが、事業の日程計画を立てる際にも、使われる考え方です。また、立場によってもこの概念は少し変化します。リードタイムは買い手側からみれば、「発注から納品されるまでにかかる時間」、売り手側からみれば、「受注から納品するまでにかかる時間」となります。
リードタイムの類語
リードタイムの類語としては、所要時間、開発期間、調達期間、製造時間、移動時間、などがあります。
英語では「lead time」として、ほとんど同じ意味で使われますが、ビジネスシーンでは「L/T」と省略されることもあります。
「納期」とは違うの?
似たような言葉に「納期」があると思います。しかし、リードタイムを納期と同じ意味で使ってしまうのは誤りです。
リードタイムが示すのは、発注から納品までの「期間」ですが、納期が指すのは、納品の「期限日」となります。従って、商品の納品について、「〇営業日」・「〇日間」とあればリードタイム、「〇月〇日」とより具体的な日付であれば納期を指していることになります。
タクト・タイム、サイクル・タイムとは?
タクト・タイム
タクト・タイムとは、生産の「リズム」を決める基準値で、「ピッチタイム」とも言います。お客様の、「何個の製品をどれくらいの期限内に納品してほしいのか」、という需要から計算します。
簡単に言えば、「実際に稼働できる時間の合計÷必要数量」で表すことができ、休憩や待ち時間を除いた実際の稼働時間を、必要数量で割ることで、製品1つをどのくらいで作らなければならないかを求めることができます。
工程作業時間がこれを超えてしまった場合は、生産の遅延によりお客様の需要に応えられない、という判断基準になります。
サイクル・タイム
一方で、サイクルタイムとは、実際にその工程の初めから終わりまでの1サイクルにどれくらいかかるかの実際の時間になります。計算式でいえば、「合計実稼働時間÷生産数」となり、タクトタイムと比べることで、お客様からの注文に間に合いそうかどうかを判断することができます。
リードタイム区分別!短縮方法
リードタイムの短縮には、設備の導入や、人員の増加などの方法が考えられますが、これは各工程にかかる処理時間を短縮するための投資です。
日本の製造業では、リードタイム全体に対する滞留時間の割合は約8割だと言われており、この滞留時間の短縮を検討するとリードタイム全体の短縮にも効果があるとされています。
また、リードタイムは、工程ごとに分解して考えることもでき、考えられる短縮方法も様々なので、基本的なものをいくつかご紹介します。
開発リードタイム
開発リードタイムとは、商品企画やコンセプトの検討・決定から、それらを商品の形に仕上げていく過程にかかる期間のことです。どのような技術や材料を使うのか、資材の調達方法や、生産を発注する工場の決定などもここに含まれます。開発リードタイムを短縮することができれば、タイムリーに市場に商品を投入することが出来ます。しかし、開発リードタイムを無理に短縮しようとすれば、工数や人員を増やさなければならなくなり、かえって開発費増額なんていう結果にもなりかねません。
・仕入れ先の見直しや、優先順位をつける。
・部品の共通化など製品やサービスに共通化できる部分を増やす。
などの方法で、調整・対応していくことが可能です。
調達リードタイム
調達リードタイムは、商品企画に沿った材料を調達し、納品や検査なども含めて、生産現場の納入要求に対応できるまでの時間を指します。材料の調達は、自社生産の場合や、外注により調達する場合がありますが、特に海外の会社などに外注する場合は、その運搬にかかる時間にも注意しなければなりません。
また、調達する品が製品であれば、調達先での生産リードタイムも含める必要が出てきます。調達リードタイムの遅延及び短縮は、納品リードタイムにも直結して影響を及ぼします。
・取引先企業に改善点を指摘するなど、企業間での調整。
・自社内での調達であれば、社内で改善点の作成や調達計画の見直しを行う。
上記の方法はシンプルですが、綿密に立てた計画通りに進むことこそが、調達リードタイム短縮においては最も効率的なのです。
生産リードタイム
資材の調達の後、工場では生産が開始されます。そこから、製造工程を経て必要数の製品が出来上がるまでの期間を生産リードタイムと言います。もちろん、実作業時間だけではなく、滞留時間なども含まれます。生産リードタイムにおいても、自社で生産が完結する場合と、社外生産の工程が一部含まれる場合などがあります。
生産リードタイムを短縮するためには、工程の処理時間の短縮のみならず、工程間の滞留時間を省くことも重要になってきます。原材料の調達待ちや、仕掛在庫の管理などをうまく管理できるかどうかが、生産リードタイム短縮のカギになると言えます。
・人員の増加、再配置
・機械・設備の更新
・生産計画・各作業計画の見直し
単に人や機会を増やし工程処理時間を短縮するだけでなく、細分化した作業工程それぞれの生産計画を最適化することが重要です。
配送リードタイム
配送リードタイムは、工場で商品が出来上がってから、実際に発注先に納品するまでの期間です。商品輸送だけでなく、検品や入出庫、納品先の仕分けなど、いろいろな業者や人が関わってくる段階となります。
・倉庫管理を見直す。
・検品や梱包など出荷前作業を効率化する。
・配送ルートの最適化を行う。
特に配送に関しては荷待ち時間などの待機時間の最適化が重要になってきます。
現在におけるリードタイムの重要性
リードタイムの短縮の重要性が増してきている背景には、ネットショッピングなどの台頭があると言えます。ネットショッピングには、「すぐに届く」という強みがあります。当日配送サービスなども広まっている中で、物流におけるリードタイムの短縮の必要性が増してきたのです。今後も、ECやネットショッピングの需要の高まりとともに、物流リードタイムの短縮は求められていくと考えられます。
リードタイムを短縮できた際のメリット
収益向上
より多くの注文を短時間で処理することができれば、発注→納品の回転率が上がりより多くの利益を見込めます。発注者や購入者にとっても、必要なものが必要なだけはやくに手に入るということは、満足度の向上に直結し、次回からの受注機会の増加にも繋がります。
また、調達から納品までの期間を短縮できるため、倉庫内の在庫を現金化するまでの期間を短くできます。キャッシュフローの改善が見込まれ、事業の成長にプラスに繋がるでしょう。
在庫管理コストの削減・過剰在庫を抱えない!
まず、在庫が増えてもすぐに納品につなげることができるので、保管スペースの節約や、保管作業・保管人員を減らすことが可能です。
また、過剰在庫を抱えることもないので、棚卸などの作業もミスを減らしたうえで、素早く少人数で行うことができます。また、製品や部品を倉庫に保管しておく時間が減ることで、品質劣化を防ぎ、生鮮食品であれば鮮度を保ったまま、納品に至ることが可能です。
リードタイムの短さが、そのまま事業の強みになる
発注があってから、素早く納品することで、発注先の満足感を向上させ、信頼感も醸成されるため、その後の受注や関係性にも好影響を与えることができるでしょう。
また、確立した「リードタイムの短さ」という評判は、そのまま自社事業の強みとなり、競合他社との差別化にも繋がります。
作業計画の精度UP・問題点の可視化
リードタイムの短縮を目指し、各工程の作業計画を見直すことで「どこに問題があるのか」が見えてきます。そこで無駄を省き、問題を解決していければ、今後の作業計画の精度向上につながります。また、開発・調達・生産・配送それぞれの段階で、どこにリードタイムを長くさせている要因があるのかを把握することができます。
ビジネスチャンスを逃さない
リードタイムを短縮させることで、市場のニーズに対してスピード感を持って対応していくことができます。需要のある商品を、適切なタイミングで市場に投入できるという点は、事業の大きな強みになります。
リードタイム短縮を目指す際の注意点
リードタイム短縮のため、計画を立てていく際に注意しなければならないポイントを説明します。特に、作業計画改善の際に気を付けなければならないのは、リードタイムの短縮が目的になってしまうことです。効率重視になりすぎて、品質を落としてしまっては、かえって事業に悪影響を与えかねません。実現可能な計画を、現状の問題に合わせて立てていきましょう。
小ロット生産のリスク
部品や製品の入出庫の流れをよくすることで、在庫を抱えなくて済みますが、万が一生産停止などになった場合、在庫が少ない分はやくに事業をまかなえなくなってしまいます。生産停止に至るようなトラブルとは、取引先の営業停止なども考えられますが、そのほかにも災害や、海外との取引があれば国際情勢など、絶対にないとは言い切れない要因が多いのも難しい点です。
また、需要と物流の回転率のバランスがとれていればよいのですが、例えば需要が急増した場合などに、自社に在庫があればそこで収益を見込めますが、在庫がなければまた発注から納品までの時間がかかってしまいます。市場予測や、追加発注におけるリードタイムの短縮などで対応可能かもしれませんが、在庫リスクを最少にしつつも、リードタイムを最短にできるように調整しましょう。
品質の低下
作業を止めないことを優先してしまい、作業工程の手抜きやミスを招く可能性があります。不良品が増えれば、リードタイムも伸びますし、もちろん自社への信頼も失ってしまいます。作業計画を見直す際には、人材不足やスキル不足なども考慮し、無理のない計画を立てましょう。現場の状況を把握し、現実的な変更にすることが大切です。
まとめ
リードタイムの短縮を目指し作業計画を見直すには時間がかかるかもしれませんが、そこで確立した最小限のリードタイムは自社の財産になります。多くのIT企業がリードタイム短縮のためのソリューションを開発していることからも、リードタイム短縮の需要が高まっているのがわかります。現場に即した生産計画を立てて素早く市場に適応していきましょう。
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